第3話「マイオリタキボウ」
悲劇やトラブルに見舞われながらも、西を目指して進み続ける一行に、エストニアを拠点に活躍していた人気ユーチューバーのKITE(カイト)が加わる。
出典:Netflix「日本沈没2020」配信ページ
§非常事態に”思春期”は発動するのか?

第3話で印象的だったのは、歩の古賀に対する恋心の描写です。古賀の一挙手一投足を観察したり、七海に嫉妬したりと中学生らしい”思春期”が描かれていますが、それが彼女の置かれている非常事態から乖離しているように思える。つまり「こんな時に呑気に恋とかしてる場合か?」という感覚です。

そこで、人は非常事態にも異性を意識するのか?について考察してみました。


§私の経験
まず結論から申し上げて、私は「人は非常事態にも異性を意識する」と考えており、その理由として自身の震災(東日本大震災)体験があります。

本震当日。ライフラインが止まる中、とりあえず食料を確保するために近くのコンビニエンスストアへ駆け込んだ私は、狭い店内にぎゅうぎゅう詰めになった若いカップルたちの会話に衝撃を受けました。おそらく大学生であろうそのカップルの若い女性は、この非常時にもかかわらず「カップラーメンとか食べたら太っちゃうから、私はこれにする」と言ってクリーム玄米ブランを彼氏に渡していたのです。冷静に考えてそんなことを言っている場合ではありません。このときはまだ被害の状況が不透明だったため、大したことはないと考えていたのかもしれませんが、それにしても過去に経験したことのない大きな揺れの後にとる行動としては(歩の思春期のように)「異常」に思われました。


§震災婚
当時、東日本大震災をきっかけに結婚したカップルは「震災婚」と呼ばれ、一種の社会現象として捉えられました。この「震災婚」という現象も、非常事態における性愛の存在を裏付けています。


§非常事態だからこそ
自身の経験や震災婚などから察するに、人間も生物である以上、非常事態だからこそ異性を求める傾向にあるのだと思われます。生物として考えれば、生きるか死ぬかという生命の危機が迫るほどに、本能として子孫を残すことの重要性が増します。その結果、平時以上に異性を意識するようになる、つまり、歩の行動は一見ストーリーから乖離しているように見えて、実際にはもっともリアルな描写なのではないでしょうか。


前回記事の結論部分と一致しているのは「非常時における人間の行動は、生物としての本能が優位になる」という点です。
当たり前の結論になりましたが、今後この作品を観ていくにあたって持ち続けたい視点ではあります。