第8話「リアル・ミー」
〜鏡から読み解く虚像と実像〜
ロズのもとから旅立ったエコヲたちの前に現れたのは、ミュウのことを「プリンセス」と呼ぶ青年将校。彼は、かつて世界の中心と称された街・ロンディニウムを統治するカウンシル部隊の隊長、トミー・ウォーカーだった。トミーからの指名で、ミュウは聖なる夜に披露される舞台の主演女優を務めることになるのだが……。
出典:TVアニメ「LISTENERS」公式サイト
【鏡が描く虚像と実像(リアル・ミー)】
第8話では「鏡」が象徴的な役割を果たしています。
鏡をモチーフにした作品は数多く、例えば「白雪姫」や「鏡の国のアリス」などが有名です。
これらの作品の中で、鏡の中の世界/鏡が映し出す世界は、パラレルワールドとして機能するほか、鏡に映る鏡像(≒虚像)が実像を飲み込んでしまったり、鏡自体が重要なアイテムとして登場しています。(ex.「ひみつのアッコちゃん」)

こうした鏡のモチーフは、鏡の”ある特性”に由来しています。
その特性とは「この世界で自分だけが、決して自分自身を直接見ることができない」というものです。
鏡に映る自分は、光の反射によって映し出された鏡像にすぎません。それは左右が反転しているだけで他者から見たときの自分の実像とほぼ変わりないと言うこともできますが、それでも実像と完全には一致しない。鏡像はあくまで虚像なのです。

この特性を踏まえて本作品を見ていきます。

鏡が登場する主なシーンは次の3つ。
①青いドレスを着たミュウが鏡に向かい支度をするシーン
②私服のミュウが台本を読みエコヲと会話するシーン
③舞台本番前、ミュウが鏡に写る自分を見つめるシーン


①青いドレスを着たミュウが鏡に向かい支度をするシーン
舞台衣装の青いドレスを着て鏡に向かうミュウ。
その姿に見とれたエコヲは「青いドレスを着た彼女を見たことってある?」とつぶやきます(ナレーション)
➡️こんな彼女を見るのは初めて。僕の知らない彼女。エコヲにとって初めて見るミュウの姿だったので、あえてミュウとは呼ばず”彼女”としているのでしょう。
逆に言えば、ミュウという名前はエコヲが付けたものなので、現在のエコヲにとっての彼女の実像=ミュウという意味です。


私服のミュウが台本を読みエコヲと会話するシーン
このシーンでミュウは「エコヲは変わんないね」「でもちょっと変わった」と微笑みながら話しています。
屈託のない笑顔といつもの服装のミュウは、①に記載したミュウ(=現在のエコヲにとっての彼女の実像)だと捉えられます。
そして「エコヲは変わらない」というミュウの言葉からは、自分にミュウという名前(実像)をくれたエコヲに、いつまでも変わらずにいてほしい、それがひいては自分がミュウでい続けられることだという思いが伝わってきます。


舞台本番前、ミュウが鏡に写る自分を見つめるシーン
このシーンでミュウは
鏡を見てると、まるで自分が自分じゃないみたい」と話します。
これがすなわち鏡像(≒虚像)としての自分そのものです。


①〜③をまとめると

①ミュウ(=
現在のエコヲにとっての彼女の実像)の揺らぎ
②ミュウ
(=現在のエコヲにとっての彼女の実像)は、彼女にとってもまた、大切なアイデンティティであること
③彼女の鏡像(≒虚像)が、ミュウ(=現在のエコヲにとっての彼女の実像を飲み込もうとしていること

を描いているのです。

果たしてミュウにとって、そしてエコヲにとっての「リアル・ミー」は一体どんな実存なのでしょうか?


【冷めた朝食】
鏡の他にもう1つ気になる描写として「朝食」のカットがありました。
単に”朝が弱い”せいだけとは思えないほどぐったりとしたエコヲは、用意された朝食がまだ温かいうちに目覚めたにもかかわらず、次のカットでは朝食の湯気がなくなっていることから、すっかり冷めてしまうまでの時間、全く手をつけずに横になっていたことがわかります。
音酔いのせいなのでしょうか?エコヲの異変も気がかりです。